一般社団法人日本睡眠改善協議会 理事
睡眠・生活研究所 所長(主席研究員)
富山県公安委員。富山県社会福祉協議会理事。
2013年~2015年富山大学人間発達科学部部長、人間環境システム学科教授を経て
2019年3月まで同学の理事・副学長、教育・学生支援機構機構長を退任し、同年4月より現職。
2020年8月1日より富山県初の女性公安委員に就任。
Message
先進国の中でも日本人が最も睡眠時間が短いことは近年ようやく認識されはじめました。日本人はこれまで「勤勉さ」や「根性」を美徳として一生懸命頑張ってきたので、上手な休み方やリフレッシュの仕方が分からず、働きすぎてしまう傾向があります。
近年、科学的には、上手に休憩を取ったり質の高い睡眠を確保することで日中のパフォーマンスが向上したり、生産性や学習成果を最大限に引き出せるという生活の質(QOL)向上につながることが証明されています。
このような科学的事実から目を背け、根性論や精神論で無理を続けると、その結果、交通事故や産業事故などのヒューマンエラーや、心身の不調、医療費の増大、うつ病や過労死の引き金ともなり、人命や経済的損失が莫大なものとなってしまいます。
それは個人の幸福度のみならず、国の発展にも影響を及ぼし、毎年総額15兆円と言われている睡眠負債による経済損失は、個々の企業にとっても深刻な課題となることは想像に難くありません。
これからの企業経営において、真に労働者の心身の健康を守り、生産性も向上させ、成長戦略を実行していくためには、まずは社員一人一人の健康管理に焦点を当て、持続可能な働き方の改革を推進することが生産性の向上に直結すると考えます。
人間はロボットではないので、質の高い生活を持続するためには、質の高い睡眠を確保し、睡眠負債を蓄積することなく、日々の疲労やストレスを日々こまめに解消して活動を継続することが企業にとって最も生産性を向上することに繋がります。
AI以上にクリエイティブで柔軟な人間の脳には、「睡眠」という栄養が確保されてはじめて最高のパフォーマンスを発揮し、さらなる学習・習熟効果が相乗的に生産性を向上する可能性があります。
睡眠の良し悪しは脳の健康、特に前頭連合野の働きに直結しており、情報のインプット、アウトプット、正確な判断、意欲、満足度、感情の制御等、多くの行動や感情に関わっていることが科学に証明されています。
これからの時代には、科学的な根拠に基づいた企業の健康経営が、企業の更なる発展には必須だと言えるでしょう。