企業における睡眠改善促進の重要性 ch.1
/ レポート
富山大学理事・副学長/一般社団法人日本睡眠改善協議会 理事 / 神川 康子 先生
勤勉な国が取り組むべき睡眠改善
先進国の中でも日本人が最も睡眠時間が短いことは近年ようやく認識されはじめました。日本人はこれまで「勤勉さ」や「根性」を美徳として一生懸命頑張ってきたので、上手な休み方やリフレッシュの仕方が分からず、働きすぎてしまう傾向があります。
近年、科学的には、上手に休憩を取ったり質の高い睡眠を確保することで日中のパフォーマンスが向上したり、生産性や学習成果を最大限に引き出せるという生活の質(QOL)向上につながることが証明されています。
このような科学的事実から目を背け、根性論や精神論で無理を続けると、その結果、交通事故や産業事故などのヒューマンエラーや、心身の不調、医療費の増大、うつ病や過労死の引き金ともなり、人命や経済的損失が莫大なものとなってしまいます。それは個人の幸福度のみならず、国の発展にも影響を及ぼし、毎年総額15兆円と言われている睡眠負債による経済損失は、個々の企業にとっても深刻な課題となることは想像に難くありません。
これからの企業経営において、真に労働者の心身の健康を守り、生産性も向上させ、成長戦略を実行していくためには、まずは社員一人一人の健康管理に焦点を当て、持続可能な働き方の改革を推進することが生産性の向上に直結すると考えます。