中学校における「睡眠教育」

 / レポート
株式会社スリープテクネ 共同研究者 / 神川 康子
中学校における「睡眠教育」

睡眠と教育

富山大学人間発達科学部附属中学校で、「緊急事態宣言の中で学ぶこと」をテーマに睡眠教育を実施いたしました。毎年、中学校1年生を対象に睡眠についてお話をさせて頂いていますが、今年は新型コロナウィルス感染症対策の影響により、生徒からも休校中に生活リズムがすごく乱れてしまったので、これから今日の話を思い出して、少しずつ生活を元に戻していきたいとの感想が沢山聞かれました。

外出自粛により、ご家族が常に一緒に生活することで、子どもたちの生活時刻が大人に引っ張られてしまうことも懸念されます。適正な睡眠時間には個人差がありますが、成長段階や代謝機能の違いによって各年代別に求められる睡眠時間も異なります。年代別に寝起きする時刻を一覧でまとめましたので、リビングなどに張り出して家族みんなで正しい生活リズムで過ごせるように習慣化していっていただきたいと思います。

また、生徒たちとの対話の中で、最も衝撃的な質問は「夜の塾での授業がリモートで、夜6:30~9:30までタブレットを見ていたら、全然寝付けなくて困っています。どうしたら良いでしょうか」という内容でした。中学校1年生にとってのベターな睡眠習慣や、私たち人間の生体リズムの観点から見た正しい生活習慣と、現実的なギャップを埋めていくのは、親御さんだけでなく生徒たちの成長に携わるすべての人々が、睡眠習慣に関する知識と意識を持つ必要があります。

学習意欲の高い子どもの生活習慣の特徴

  1. 起床時の気分が良い
  2. 学校で居眠りをしない
  3. 食べ物をよく噛んで食べている
  4. 食欲がある
  5. しょっちゅうあくびをしない
  6. いつも元気そうにしている
  7. 走るのが好き
  8. 家族のことが好き

(富山県・石川県における小学校1年生から高校3年生までの児童・生徒4,543人の調査結果)

これまでの調査結果から、睡眠習慣、食事習慣、運動習慣、そして家族関係が良好なほど、学習意欲は高いと言えます。外出自粛の今、家族で過ごす時間が多く、かえって夫婦や親子のストレスが高まる傾向も見られます。お互いの時間も大切にしながら、睡眠・食事・運動は「同じ時間」に過ごすことで生活リズムが整い、健康だけでなく学習に対してもプラスの影響が期待できます。運動については、屋内でもできる体操やストレッチをするなど、親子で工夫することを会話のテーマにするのも楽しいでしょう。

直近の定期テストの結果だけでなく、健康状態、学習に対する意欲についても目を配ることは、中長期的に生徒たちのプラスになるのではないでしょうか。現在、全員が意識できているソーシャルディスタンス同様に、ソーシャルジェットラグ(睡眠リズムの乱れ)についても啓発が進み、健康で生き生きとした毎日が送れますことを心から祈念しております。